ばかのこ日記

おバカも精一杯生きてます。栗かのこは1度食べてみてください。

荒れ狂う横浜市の成人式に行ってきた話


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私は昔から入学式とか卒業式とかそういう「式」の類のものが大嫌いだった。

入学式はぶっつけ本番だからまだマシではあるが、卒業式には練習があるのだ。あのどこを取ってもつまらない式のために何回も立ったり座ったり歩いたりする練習をするのが本当に苦痛だった。

時計を見るたびにまだ3分しか経っていないことにひたすら絶望していたのを覚えている。


そんな私に突如降りかかってきた成人式。

もちろん成人式は20歳になる年の1月に行われると決まってはいるが、まさか自分にその番が回ってくるなんて思っていなかったので私にとって成人式は突然やってきた。

最初は行かないつもりだった。でも、なんとなくそれを親や友達に公言する勇気もなく時は経ち「今日着物選びに行くよ」と母に言われ渋々着物を選びに行ったのだった。


着物を買ってしまったら最後、成人式に出ないという選択肢はインフルエンザにでもかからない限りありえない。こうして私は成人式に出ることになったのである。

普通に生きてきたら成人式に出ることを億劫なんて思わないだろう、私はこの20年でだいぶ臆病になってしまったなあなどと呑気に考えた。


私は午後の部だったので着付けに行く時間は10時前だった。午前の部だったら朝の6時には準備をしなければならなかったことを考えると、私を午後の部の地区で育ててくれた親と私の地区を午後の部に決定してくれた人に心の底から感謝した。美容室はデパートの中にあったのでまだオープンしていないデパートの裏口から入って行くため少しドキドキである。

中に入ると、5メートルごとにカッコいいお兄さんが立っており「おめでとうございます」とそれぞれに言われた。私は「ありがとうございます」と返しそのお兄さんが次のお兄さんポイントまで案内してくれる、というのを美容室に着くまで延々と繰り返した。なので「おめでとう」と言われる前に「ありがとう」と言ってしまいそうになる場面も多々あったが堪えた。


案内してくれたのがカッコいいお兄さんだったのでヘアセットしてくれるのはどんな人だろうと胸をときめかせたが、担当の人はイケてるおじさんだった。もしイケメンだったとしたら無駄に緊張してしまうからイケてるおじさんで良かったなとプラスに捉えることにした。


おじさんに髪をいじられながら、今度はお姉さんがやってきてメイクをしてくれた。なんだか収録前の女優さんみたいでいい気分だった。

ヘアセットとメイクが完了するとつぎは着付け部屋に案内された。そこでは既に10人くらいの女の子が着替えており、私も鏡の前に立ってベテランそうなおばさんに着付けをしてもらった。これがなかなか大変で、おばさんが「フンっ」と力を込めて着付けてくるので油断しているとすぐフラフラしてしまい「ちゃんと立っててね」と言われてしまう。私は仁王立ちになっておばさんに注意されないようにしっかりとバランスを取った。

そうして1時間半ほどでヘア&メイクと着付けは完了した。外で待っていた母に見せると雑に「かわいいかわいい」と言ってくれた。


着物を着た状態で外を歩き回ると色んな人がこちらをチラチラ見て「あ、成人式よ」「そっか今日成人式か」などと言い合い今日が成人式であったことを思い出していた。はじめはなんだか恥ずかしい気分だったけれど10分ほどで慣れて「私を見て、今日は成人式なのよ」と言わんばかりに堂々と歩くことができた。


しかしそれも会場である新横浜に着くまでのことであり、新横浜駅に着くとすでに新成人でごった返していた。どこを見渡しても新成人、新成人、新成人。なんだかみんなどことなく浮かれていて異様な雰囲気だった。


私は中学の同級生と落ち合って、ひととおり写真を撮りまくり横浜アリーナへ向かった。


この時点で既に午前の部は終わっており、午前中の式が荒れて一時中断になったことがTwitterやインスタで流れていたのを友達に見せてもらった。動画では奇抜な袴を着た男の子たちがケンカ?のような殴り合いをしていた。私は中学も高校もわりと穏やかな方だったので、こんなドラマのような殴り合いを見るのは初めてで、不謹慎にも私の胸は高鳴った。友達と「怖いねぇ、やめてほしいね」なんて言いながら心の中では「ちょっと見てみたいかも」などと迷惑きわまりないことを考えてもいた。


アリーナの中は自由席になっていて、着た順に座れるようになっていた。私と友達は壇上から近い前の方に座ったのだが、その真後ろにさっき動画で見たような奇抜な袴を着て、同じく奇抜な髪型をした男の子たちが6人くらい腰掛けてきたので私はこの場所に座ったことを激しく後悔した。「ちょっと見てみたい」とは思ったが巻き込まれたいなんて1ミリも思っていない。どうか何事も起きませんようにと神様に祈りながら式は始まった。 


私は式の最中、常に背後に神経をとがらせていた。しかし、男の子たちは全くと言っていいほど動く気配がなかった。「みなさん、ご起立ください」と言われても絶対に動じず、君が代横浜市歌も歌わずただ石のように座っていた。

そして、そのうちの1人が「トイレ行ってくるわ」と立つと他の5人も一斉に立ちトイレに向かった。まさか6人の尿意が一斉に来たわけでもないだろう、これがいわゆる連れションというやつかと1人で納得していた。


背後の6人が連れションのためにいなくなったので、神経をとがらせる必要がなくなった私は本当にすることがなくなってしまった。知らないおじさんやおばさんの話はなかなか耳に入ってこない。

つまらないので、寝ようかなぁと思っていると視界の片隅に動きが見られた。どうやら輩が動き始めたようだ。4.5人くらいのスーツを着た彼らはどうやら壇上の方に向かおうとしている様子だった。私には彼らが壇上にのぼって何がしたいのかは全く見当がつかなかった。彼らにとって壇上はそれほどまでに価値があるものなのか…インタビューしたい気持ちになった。

しかし、横浜市の成人式は毎年荒れるため警備は厳重だった。壇上は警備のおじさんによって完璧に守られていた。少しでもスーツ集団が壇上に近づこうとするとガタイの良い警備のおじさん達がどーんと立ちはだかりそれ以上前に進むことは不可能に思えた。

スーツ集団は頑張って粘っていたが、そうこうしているうちに式は終わってしまった。


人生に一度の成人式、慌ただしかったけれど、最終的には行ってよかったなと思えたので過去の私のように行くかどうか迷ってる人には行ってみたら、と勧めてみることにする。